Vol.006 ~ 悪貨は良貨を駆逐する

最近はとくに、数値を誤魔化して一定の品質が確保されているように見せかけることが、世界中で目立ってきました。排気ガス試験における設定のごまかしだったり、燃費データの基礎データの改ざんだったり。少し前は、種類は違うが似た食材に高級食材の名前を付けて販売することなどなど。
こうした相対的に価値の低いものが流通することを「グレシャムの法則」といいます。皆さんは「悪貨は、良貨を駆逐する。」という言葉を聞いたことはないでしょうか。これは、16世紀のイギリスで国王財務顧問をしていたトーマス・グレシャムが1560年にエリザベス一世に「イギリスの良貨が外国に流出する原因は、貨幣改悪のためである。」と進言したことに由来します。この故事を19世紀イギリスのヘンリー・マクロードという経済学者が執筆した「経済学の諸要素」(1958年)という書籍の中で「グレシャムの法則」と命名したうえで紹介し他ことによって定着した言い方です。
グレシャムが生きていた当時のイギリスでは、金本位制がとられていました。経済活動は、金(Gold)を中心に行われていたのです。当初、流通する貨幣は、金の純度が高く額面価値と実質価値の均衡が保たれた貨幣が流通していましたが、時が経つにつれて金の純度が低く実質価値が額面価値と乖離した通貨が流通し始めていきました。このため、国内における経済活動には、額面価値は同じだが実質価値の低い貨幣が流通の主流となり、実質価値の高い貨幣は国内で流通しなくなくなり、実質価値での取引が可能な海外に流出してしまったことから、命名された法則です。
今回の燃費データの改ざんや、排気ガス検証における設定の入れ替えは、性能の低い物が、燃費や排気ガスの数値を誤魔化すことによって性能の高い物と同一に取り扱われる様となり、まさにグレシャムの法則そのものでした。
まやかしの情報は都合よく扱われますが、本来の目的を達成しないため、じきに人々の眼に誠が暴かれるものです。そうであれば、真に価値があるものを、適切に評価することが重要であり、見極めら有れる目を多くの人が持つことが、今後の激動の世界を生き抜いていくためには、必要であるのではないでしょうか。皆さんはどう思われますか。
この、「悪貨は良貨を駆逐する。」でありますが、グレシャムよりもずっと前に発言している者がいます。それは、古代ギリシャの劇作家であるアリストパネスです。彼は、自作の劇の登場人物の台詞として「この国では、良貨が流通から姿をけして悪貨が出回るように、よい人より悪い人が選ばれる。」と言わせています。これは、当時のアテナイで行われた陶片追放(オストラシズム:古代ギリシャ(アテナイ)の秘密投票による追放制度)を批判して言わせた台詞なのです。
このように、グレシャムの法則は、貨幣や、物だけでなく、人にも適応できる法則です。今後我が国が、国際的にも適切な評価を有られるように、良貨や良人が生き残るには、悪貨や悪人が住みにくい国とするための努力をすることが重要だと思います。また、この努力は、弛まず続けていかなければならないものと思います。
真の価値の追求を貫き、その追求を適切に評価できる国となるためには、私たち国民すべてが努力しなければならないでしょう。
それはしかし、私たち日本国民なら、成し遂げることができると信じています。


記事をシェアーする: